不眠に対する治療・症例報告|松山市の鍼灸院|半身不随、うつ病、がん、不妊症

中医鍼灸 越智東洋はり院

0899575997

営業時間 9:00~12:00/13:30~19:00(祝日は12:00まで)
休診日  日曜日・祝日午後

掲載原稿一覧

不眠に対する治療・症例報告

掲載原稿一覧 2015年07月01日

掲載雑誌:中医臨床VOL.21-No.2

最近、症状の中に不眠を訴える患者が多く見られます。多くは陰虚火旺に属す不眠が多いようですが、最近の不眠症の病因病機は大変複雑です。その原因には、生活習慣の多様化とストレスの増大及び長期にわたる西洋薬の服用が起因すると考えられます。長期にわたる不眠症は様々な臓腑に影響を与え特に脾胃・肝に重大な影響を及ぼします。その結果、痰湿を形成し治療の難しさの原因となっています。今回ご紹介する症例は、心脾両虚証に属します。比較的顕著な効果が見られた1例です。

【症例1】45歳 女性 主婦

【初診】1997年9月7日

【主訴】眠れない。疲れやすく、頭がいつもボーとして働かない。

【現病歴】1996年4月頃から発症。当時子供の事で悩みがあり、いつも子供の事を考えている状態でした。子供の事を考えると眠れない状態が続いた。診療内科に通っていたが、あまり効果がなかった。最近、だんだん睡眠導入剤の量が増え、怖くなり本院に来院した。

【診察所見】

失眠…寝付くまでに2~3時間かかり、眠りも浅い。小さな音でドキッとビックリしたり、目が覚める。多くて4時間ぐらいしか眠れない。

多夢…よく怖い夢を見る

心悸、健忘、食少、口渇、脈弱数、舌尖紅・胖大・歯痕・舌苔厚

切経…肝兪~胃兪にかけて強い筋緊張、下腿の脾経に沿った筋緊張、陰陵泉の圧痛

【治療と経過】

治療期間9月7日~11月23日 32回の治療

証…心脾両虚証・湿邪困脾(寒湿困脾)

治則…補益心脾・補益脾胃利湿

(1)1~9回(1ヶ月)週2~3回の治療

心兪穴・神門穴、脾兪穴・胃兪穴・三陰交穴・足三里穴を配して補益心脾をはかる。また、印堂穴・心兪穴・神門穴を配して安心神をはかる。湿邪困脾に対しては、脾胃虚弱が原因であり、腹脹などの症状もないので、陰陵泉穴を配するが特に瀉的な方法は使わず平補平瀉法で様子を見る。また、三陰交穴には主作用として利湿の作用があるが、補法として補益脾胃の目的で配す。口渇・舌尖紅・脉数などの陰虚火旺の証候とおもわれる症状についてもそれほど気にならない程度なので補益心脾で配した三陰交穴の補法の重要な作用である補陰作用に期待する。つまり、三陰交穴の補法は補益脾胃と補陰の目的で配する。

操作

①心兪・脾兪・胃兪穴は内下方に向けたやや斜刺1寸 置針15分。

②印堂穴は下向き斜刺0.5寸 置針15分。

③神門穴は直刺0.5寸 置針15分。

④三陰交穴は直刺0.7~1寸 置針15分。

⑤陰陵泉は直刺0.7~1寸 置針15分。

⑥足三里は直刺1寸 置針15分。

患者表現

疲れやすく、頭もハッキリしない。少し良くなったような気もするがあまり変わりがない。薬は半分に減らしている。

所見の変化

口渇は解消され、脈数も落ち着いてきた。

患者への指導

「薬を減らしているのに症状が変わらない事は良くなっている証拠ですよ」と患者に説明し元気付ける。

(2)10~16回

舌苔厚と食欲の改善が見られないこと、舌苔が白、季節が少し寒くなってきたことも考慮して、温中化湿の作用を強める目的で中穴を加え温中化湿をはかる。また、補益脾胃の作用を強める目的で脾兪穴・胃兪穴・足三里穴に灸頭針を加える。

操作

⑦中穴は直刺1寸 灸頭針

⑧脾兪穴・胃兪穴・足三里穴に灸頭針を加える。

★灸頭針は全て施灸2回。

患者表現

物がだいぶ食べられるようになった。

所見の変化

14回目ぐらいから食欲が出てきた。また、それに合わせて舌苔厚も改善された。

患者への指導

特になし。

(3)17~21 患者の意向で週1回の治療

患者表現

母親の看病のために疲れる。食べ物はどうにか食べられる。

所見の変化

あまり不眠の事を言わなくなった。母親の看病のための疲れが出ている陽だ。

患者への指導

「貴方の病気には疲れが一番の敵ですよ」と疲れる事を避けるように指導する。

(4)22~32 週1~2回の治療

患者表現

薬も飲んだり飲まなかったりとだいぶ良くなってきたようです。食欲もあります。

所見の変化

話す声に明るさが出てきた。自分に自信が出てきたようだ。

患者への指導

「この調子で少し散歩などして身体を動かし、太陽によく当るようにした方が良いですよ」と指導した。

32回を最後に来られなくなりました。

【考察】

この症例はまだ不眠症になってからの期間が短い事、西洋薬の服用期間も短い事などから、比較的早く症状の改善か見られた。本性例は『景岳全書・不寐』にある「無邪而不寐者、必営血之不足也、営主血、血虚則無以養心、心虚則心不守舎」に属し、心脾両虚の虚証である。その病因病機は、思慮・心労(子供の悩み)による心脾の損傷から始まる。心が損傷して陰血を損耗すると神志を主れなくなる。また、脾を損傷すると、気血の生成が悪くなり、心をうまく栄養することが出来なくなる。また、運化失常となり、湿邪ガ発生し易い状態となる。結果、心神不安となり、不眠が発生したのである。臨床上単純な虚証だけの症例は少なく、ほとんど何らかの実証つまり今回の様に内生湿邪や陰虚による熱などの症状を伴う事がほとんどである。このような内生五邪の事ももちろん考慮する必要はあるが、根本的な原因は何であるのか?その事を先ず基本にして、治療方針を立てる必要がある。今回は、先ず食欲を取り戻す事、脾胃を補う事を基本とし、気血を生成させ、心の血虚を改善させる事が治療の基本となる。

ページトップへ