第11回公益社団法人日本鍼灸師会全国大会in神奈川  鍼灸と腸内環境|松山市の鍼灸院|半身不随、うつ病、がん、不妊症

中医鍼灸 越智東洋はり院

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内科系

第11回公益社団法人日本鍼灸師会全国大会in神奈川  鍼灸と腸内環境

内科系 2015年11月17日

第11回公益社団法人日本鍼灸師会全国大会in神奈川に参加しました。いくつかの講演を拝聴したのですが、その中から、「スポーツと自律神経」小林弘幸先生(順天堂大学医学部大学院医学研究科教授)の講演の内容をご紹介します。

 

「健康とは、なんですか?」とよく質問されるが、いつも「末梢の一つ一つの細胞に、質の良い血液を十分に供給できる状態」と答えている。先生は臓器移植の研究をされていたことから、このような健康観を持っているという。そのために最も重要なのが最近話題となっている「腸内フローラ」に代表される腸内環境の問題で、この分野はまだ未知の分野であるという。

 

腸内細菌は100兆個といわれるが、次世代シーケンスなどで調べると500兆個ともいわれ、その量は、1.5kg、大きなペットボトル一本ぐらい入っているという。開くとテニスコート一面ほどの小腸に万遍なく菌がいる。小腸には乳酸菌系が大腸にはビフィズス菌系が多くいる。このようなことも最近わかったことである。善玉菌と悪玉菌の割合は、2対1対7で、善玉菌が1、悪玉菌が2、日和見(ひよりみ)菌7である。なぜ悪玉菌がなくならないのかと考えますが、悪玉菌をなくしたマウスを作るとあっという間に病気になってしまう。善玉菌がサボってしまう。組織と一緒で口うるさいのがいるとまじめに働くうるさい人がいなくなるとぬるま湯になって働かなくなるという。最近では悪玉菌の中にもよいことをやっているものがあり、将来悪玉菌と善玉菌という言い方をしなくなるのではないかという。

 

大腸がんや痞満の予防や現代病の糖尿病をコントロールするのにも腸内環境を整えなければよい効果は得られないという。痞満との関連でいえば、natureで最近最もインパクトがあったものは「無駄なダイエットは一切いらない」。やせている人の腸内細菌を太っている人に飲ませればみんなやせるというもの。腸内環境がいかに肥満と関係しているのかということがわかってきた。
血液の質を決めているのは腸内環境である。善玉菌の多い環境が良い状態の腸内では、きれいな血液によって栄養素がしっかりと吸収され各細胞に運ばれる。ところが、悪玉菌が多い腸内環境が乱れた状態では、悪玉菌から硫化水素、アンモニア、インドールなどの毒素が排泄され、浸透圧の乱れが生じ、汚れてしまった血液は血管から細胞に入れず、吸収されなかった栄養素は皮下脂肪、内臓脂肪に蓄積されるため、あまり食べていないのに太ってしまうという状態になってしまう。これが現在の痞満の発生機序である。

 

更に重要なことは大腸がんの問題であるという。女性の死因の一意は大腸がん、男性も二年後には第一位になるだろうと考えられている。腸内環境が悪いとがんになりやすいとか寿命が短くなることは昔はわからなかった。血液の中に毒素が入って全身に回ると細胞に血液が行かない。ぶくぶく太っている人は実は細胞は老化していてアポトーシスの状態である。
加齢により善玉菌は減少する。自然と腸内環境は悪化していく。善玉菌の代表のビフィズス菌は、20-30代の人の便には20%、60歳を超えると1-2%かあるいはいない状態になるという。これがとても重要なポイントで、この対策には、発酵食品を摂るのがよいといわれている。大腸がんが一番少ない県は滋賀県、滋賀県と東京都の一人の発酵食品の摂取量を比べると6対2で、3倍多く摂っている。便秘が一番少ないのは茨城県、納豆が流だと思うのですが、福島県が一番摂っている。茨城県は県をあげて発酵食品を摂ろうという運動をしている。このようなこともあってよい結果が出ているのではないかと思われる。

 

その中で重要なのが食物繊維であるという。これも最近わかってきたことで、どんなに乳製品を摂っても発酵食品を摂っても食物繊維がこなければ腸内細菌は働かないということが最近わかってきたという。善玉菌は、腸壁でじっと座って見ているという。何もなければ一週間ほどして死んでしまい、排泄されるという。ところがそこに食物繊維がくるとそれがノアの箱舟となり、それに乗って働き始めるという。

 

現在の食物繊維の平均摂取量は10g以下、厚生労働省は、1日20-25g摂るべきと推奨している。第二次世界大戦の頃は30g摂っていたという。当時の摂取カロリーも現在とほとんど変わらないにもかかわらず痞満やがんが増加している。現在の大腸がんの増加は厚生労働省も予想できず、その要因に腸内環境の問題と食物繊維の摂取量の減少が重要なポイントであるというのが今回の講義の食事に関する内容でした。

 

前半は自律神経についての興味深いお話もあったのですが、今回は町内環境を中心にまとめてみました。

 

今回の講義を通じて、改めて食べ物の重要性を考えるよい期会となりました。日常の臨床の中で胃腸の問題を抱える人は多く、食べ物についての指導は欠かせないものと考えていましたが、科学的なevidenceに基づいた検証から導き出された対処法は寒邪さんに自信を持った指導が行えます。

 

鍼灸というと肩こりや腰痛、神経痛などのようなどちらかというと運動器系の疾患がよく効くというように考えられている方が多いのですが、実は胃腸疾患のような内臓の病にこそ「中医学」の長い経験が活かされ、よい効果をあげているのです。

 

中医学では、外部環境が内部環境にどのように影響しているのかということを病因論という中で東洋医学的な視点から解き明かしています。その根底には体質を考慮した、目の前の患者さんの、いま現れている現象を重視していくという、統計的な考えで画一的に行われる治療ではなく、その人にあったオーダーメイドな理解と治療が行われます。

 

胃腸の症状は特に複雑です。胃腸は中医学では、「口甜の本」と呼ばれ、大変重視されています。これは当然のことで胃腸がしっかりしていなければせっかく摂った食物も栄養にならず健康は維持できません。

 

私の師匠に中国の李世珍先生がいます。先生は胃腸の症状を最も重視していました。脾胃の昇降がきちんと行われていることをまず考えなければならないことだと教えてくれました。それは「胃腸にはりがあれば、それを先にとってから治療を進めなければならない」と指導されました。このことをいまもきちんと守って治療を行っています。

予断となりましたのでここまでとします。

 

最後に、今後「鍼灸が腸内細菌に対してどのように作用するのか?」。このような視点からの研究が望まれるところです。

 

 

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