顔面麻痺と鍼灸 ハント症候群・ベル麻痺|松山市の鍼灸院|半身不随、うつ病、がん、不妊症

中医鍼灸 越智東洋はり院

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脳神経科系

顔面麻痺と鍼灸 ハント症候群・ベル麻痺

脳神経科系 2016年06月01日

この数日間に、顔面麻痺を訴える患者さんが多く来院しています。
そのようなことから、今回は、当院の顔面麻痺の鍼灸治療についてご紹介いたします。

顔面神経麻痺とは

顔面神経麻痺は、顔面神経が支配している顔面筋の運動麻痺です。

原因疾患が明らかな症候性顔面麻痺と、明らかな原因が不明な特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)とに分けられます。

原因疾患として多いのは、ヘルペスウイルス感染症で、典型的なケースとしては口唇ヘルペスを以前患った方が突然顔面神経麻痺になるというものです。ほかには腫瘍や代謝疾患が原因となる場合もあります。

顔面神経は、運動神経以外にも舌の前3分の2の味覚を伝達したり、アブミ骨筋という音量を調節する小さな筋を支配していることから、様々な症状を呈することがあります。

ハント症候群かベル麻痺か

顔面の麻痺を訴えてこられる患者さんのほとんどがハント症候群かベル麻痺の患者さんです。まずは、この二つの病気の違いについて簡単にご紹介しましょう。

原因が明らかなものを症候性顔面麻痺と呼びその代表がハント症候群 Ramsay Hunt syndromeです。そして、明らかな原因が不明な特発性顔面神経麻痺をベル麻痺と呼びます。

当院ではベル麻痺の患者さんが多いように感じますが、この数日はハント症候群の患者さんが多く来院しました。ちなみに急性の末梢性顔面神経麻痺を来す病気で最も多いのはベル麻痺で、次いでハント症候群の順です。ともに顔面の麻痺を来す病気ですが、その原因が異なります。

ハント症候群の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルス(みずぼうそうを起こすウイルス)が原因です。みずぼうそうが治ったあとも、このウイルスは神経組織に潜んで、潜伏感染の状態で存在しています。疲れなどから免疫力が低下すると潜伏したウイルスが再び増え(再活性化)、皮膚や粘膜に水疱を伴う病変を引き起こします。

このウイルスは神経に住着き、神経を傷害するので、神経の分布に沿って帯状に病変が現れます。このことから、帯状疱疹と呼ばれます。顔面麻痺の発生は、耳や耳の穴の周囲の帯状疱疹から発生し、ウイルスが同時に顔面神経や内耳の神経を侵すことによって顔面神経麻痺や難聴、耳鳴り、めまいなどが起こります。

ハント症候群とは、この病気を報告した医師の名前からつけられたものです。これに対して、ベル麻痺は上記でも書きましたが、明らかな原因が不明な特発性顔面神経麻痺をベル麻痺と呼びます。どちらも同様に顔面の麻痺を来す病気です。しかし、その原因が異なります。

いずれにしても、顔面神経は顔面神経管と呼ばれる骨で取り囲まれた狭いトンネルを通って脳から外に出ますので、何らかの原因で顔面神経がはれる(浮腫)と顔面神経が圧迫され、それが原因で麻痺が現れると考えられています。

症状の現れ方

ハント症候群もベル麻痺も同様に、ある日突然に顔の片側が動かなくなり、顔が曲がります。ハント症候群では、耳の後ろやなかの痛みを伴うことがよくあり、水疱やかさぶたが生じます。また、聞こえが悪くなったり、耳鳴りがしたり、ふらつきやめまいが生じることもあります。

ハント症候群では、これらの症状は同時に、または時間をおいて次々に起こります。ハント症候群は様々な症状の集合ですので、麻痺と同じ側の涙の分泌低下、味覚の低下や物音が響く聴覚過敏などの症状を呈することもあります。 しかし、ベル麻痺でも同じような症状を呈することがあり、まずは専門病院での診断を受けてからの来院をお願いしています。

厄介なのが病的共同運動

6~12カ月経過しても麻痺が残り、まぶたと口がいっしょに動く病的共同運動、ひきつれなどの後遺症が残っている患者さんがいます。

この原因は、再生した顔面神経が本来の支配先と異なった筋とつながることで、誤った筋肉を支配してしまったことが原因です。このようなことから、口を閉じると眼が一緒に閉じたり、熱いものや冷たいものを食べた時に涙が出たりする異常連合運動が起こることがあります。

このような症状の改善には、慎重な症状の観察と、数か月にわたる時間をかけた治療が必要です。

このような患者さんには、医師から鍼灸を受ける際の注意点として、電気治療は禁止されています。当院では、患部への電気治療はめったに使いませんが、首や肩の緊張をほぐすことを目的とした電気治療を行うことがあります。また、病院での長期の治療にもかかわらず効果が出ない場合は、電気治療を用いることもあります。

また、発症から半年以上経過している場合や筋肉がやせてきている場合には温灸(瘢のつかないお灸)を多用して筋肉の循環の改善を図ります。

当院の鍼灸治療

当院には急性期から、病院での長年の治療にもかかわらず効果がでないため、止むを得ず治療の打ち切られた患者さんも来院しています。

治療の効果の評価については、下記の「40点法」を用いています。
合計麻痺スコアーが38点以上で正常、8点未満で完全麻痺とします。8点未満であっても、早期に回復傾向を示せば完全治癒することもあります。

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■後遺症については下記の評価表を利用しています。

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鍼灸治療の開始はなるべく早く

治療の開始時期については、なるべく早く治療した方が効果が上がると考えています。副腎皮質ステロイド療法を終了した後に、瞼が閉じず口からは涎が出るというような状態であっても施術の必要性がない程度のものであれば、週2回の二週間ほどの鍼灸だけの治療でも症状はかなり改善しています。

何よりも早期の治療が効果的です。副腎皮質ステロイド療法中であっても、当院では鍼灸の治療をお勧めしています。早期に治療を開始することが重要と考えています。

当院の鍼灸治療の特長

当院の顔面神経麻痺の治療は、局所取穴による麻痺部の気血の流れを改善する局所治療・循経取穴による経絡の気血の流れを改善する循経治療・弁証取穴による体全体の気穴の流れを改善する弁証治療の三つの方法を行います。

 

局所治療では透刺法(2つのツボをつなぐ方法)を多く用います。どの筋肉が麻痺しているのか。いろいろな表情をしてもらうことで病位を明らかとし、それぞれの症状に適した透刺法に用いるツボを選穴します。

 

3~5糎程度皮膚に沿って地平鍼(深く刺さず皮化に沿って刺入する方法)します。

 

さらには循経取穴という合谷穴や手の三里などを代表とするツボを選穴し、関連する経絡の気血の流れの改善を図ります。

 

この局所取穴と循経取穴による麻痺などの症状を現している部位を根拠としてツボを選穴する治療を標治法と呼びます。

 

一般的にはこの標治法だけでかなり改善しますが、当院では、さらに弁証取穴という患者さんの症状を表している原因を様々な角度から分析して導き出された「証」に適したツボを選定します。

 

これは患者さんを全体的にとらえ、体質をも考慮して導き出された治療であり、根本的な原因を除去するためには最も重要な治療となります。

 

中医鍼灸治療では、これらの「標治法」と「本治法」を同時に行います。この弁証取穴から導き出されたツボを用いた「本治法」は中医鍼灸治療の特徴である「同病異治」と「異病同治」の根拠となるものです。

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