三陰交穴の様々な臨床応用を考える テキスト (公社)愛媛県鍼灸師会特効穴検討会報告|松山市の鍼灸院|半身不随、うつ病、がん、不妊症

中医鍼灸 越智東洋はり院

0899575997

営業時間 9:00~12:00/14:00~19:00(祝日は12:00まで)
休診日  日曜日・祝日午後

講演会・ボランティア活動

三陰交穴の様々な臨床応用を考える (公社)愛媛県鍼灸師会特効穴検討会発表

講演会・ボランティア活動 2019年01月23日

2019.1.20(公社)愛媛県鍼灸師会特効穴検討会資料

三陰交穴の様々な臨床応用を考える

越智東洋はり院 越智富夫

 

私たちは臨床上様々な経穴を用いているが,それはどのような考えのもとに選穴しているのだろうか。経穴の主治作用には,①局所部位に対する治療作用・②近隣部位に対する治療作用・③遠隔部位及び全身に対する治療作用がある。例えば,合谷穴で言えば,手や腕の腫脹・疼痛,手の痺れといった局所の疾患,上肢麻痺など近隣部位の疾患,身体の痛み・頭痛・全身性の発熱疾患など遠隔部位や全身性の疾患という具合である。局所,近隣の治療作用は経穴の所在する部位にもとづくもの,遠隔及び全身の治療作用は経脈にもとづくものとツボの3方面への主治作用は臨床において選穴と配穴の根拠となっている。最近ではそのツボの効能・作用というものを根拠とする更に発展した「処方」が記載された成書が多く出版されている。鍼灸も「理・法・方・穴・術」がシステムとして確立することで鍼灸学と呼ぶのにふさわしい段階となってきたのではないかと思う。今回日常よく用いられている三陰交穴を例にして,単純な主治を参考にした選穴では正しい効果が得られないこと,主治はその前提に効能や作用から選穴しなければならないこと,また,いくつかの経穴を組み合わせることで,様々な症状に対する主治が可能となることをご紹介する。

 

<三陰交の治療範囲>

1.婦人科疾患

婦人科病の経,帯,胎,産諸疾と,衝,任,帯脈とは密接な関係がある。衝脈は「血海」をなし,任脈は「胞胎」を主つており,帯脈は諸脈を「約束」している。また,この三脈は,肝脾腎と密接に関係している。

例,脾胃が虚して化源が不足,肝腎の精血が少なくなる。衝,任,帯脈を充足できなくなり,生成の源が不足する,胎も栄養されなくなる。胎,産,帯,経の諸疾が生じるようになる。

このことから,肝脾腎三臓の機能失調が,衝,任,帯脈に影響しておこる病証には,本穴を用いることができる。

2.血証

脾不統血,肝不蔵血,肝血虚損,精血虚損などによる病証の治療には本穴を用いる。本穴には,統血,涼血,全身の血分の虚損を補益する,全身の血液の運行をよくするなどの作用がある。したがって,各種の原因によりおこる血虚,血,血熱などの病証を治療できる。

3.肝脾腎と関係する生殖,泌尿器系疾患および経脈病

足三陰経の循行路線,また肝脾腎三臓の生理機能と,病理における特徴から三陰交は肝脾腎三臓の機能失調による生殖,泌尿器系疾患を治療するとされている。また本穴は,足三陰経の循行している下肢,陰器,腹,胸,脇,肋などの部位の病変も治療する。

4.経筋病証

本穴の所在する部位を走る経筋が,拘急または弛緩する経筋病(内反足,内反尖足など)には,本穴を用いることができる。

 

<三陰交の効能>

1.弁証取穴

①補法:健脾統血,補血,育陰

(湯液における四物湯,阿群,何首烏,龍眼肉,紫河車,黒蒲黄,炒霊脂,茯苓,山薬,苡米,扁豆などの効に類似)

②瀉法:活血去,疏肝,行湿

(湯液における当帰尾,赤芍薬,姜黄,桃仁,紅花,乳香,没薬,蒲黄,霊脂,郁金,香附子,玄胡,益毋草,茯苓,沢瀉,土茯苓などの効に類似)

③瀉法(軽く瀉す):透天涼を施すと涼血の効がある

(湯液における生地黄,牡丹皮,地骨皮,黄柏,玄参,丹参,地楡,茜草などの効に類似)

④先瀉後補法:活血,去生新

(湯液における全当帰,川芎,丹参,鶏血藤の効に類似)

2.局部取穴

 ①瀉法:舒筋活絡,②補法:壮筋補虚

 

  • その他の作用,主治の記載(鍼灸経血辞典 東洋学術出版社)

作用:補脾胃,助運化,通経活絡,聴話気血。

主治:腹部膨満,腹鳴,下痢便,消化不良,月経不順,不正子宮出血,帯下,子宮下垂,無月経,月経痛

不妊症,難産,遺精,陰部痛,疝気,排尿困難,遺尿,下肢麻痺,動悸,不眠症。

 

  • 代表的な配穴

①三陰交─陰陵泉の配穴

三陰交は肝,脾,腎三経の交会穴であり,補脾,補肝,補腎の作用がある。肝には蔵血,脾には統血,腎には蔵精の機能があり,精血はまた互いに転化する。したがって三陰交には培補精血,益陰固陽の作用がある。また腎には陰陽があり,その中には真火が宿っている。補腎すると命火を助け,脾陽を温煦することができる。

脾腎の陽気が充分であれば生機は旺盛となり,身体は温められ,陰霾の気も消散する。このことから補中益気,温中散寒の作用があることがわかる。このように三陰交には気血調和,陰陽両補および肝,脾,腎を補する作用があり,補益の要穴とされる。

陰陵泉は足太陰脾経の合穴(水)であり,水道を開通する作用がある。

三陰交と陰陵泉を配穴すると,益腎助気,通利水道の作用が生まれ,水気不化による小便不通あるいは尿閉等の証を主治する。また温脾散寒,行気止痛の作用が生まれ,腹脹腹痛,暴泄,泄瀉,痛経(月経痛)等の証を主治する。

②三陰交─陽陵泉の配穴

滋陰,平肝,疏気和血,通経活絡,舒筋利節の作用が生まれ,気血不足,陰虚肝旺および風湿阻痺,下肢麻痺等の証を主治する。

③三陰交─足三里の配穴

三陰交には滋陰,健脾,助陽の効能がある。足三里には昇陽,益胃,和中の効能がある。

三陰交と足三里を配穴すると,健脾温中,益気養血の効能が生まれ,脾胃虚寒,気血両虚および脾虚胃弱,食少納差(食欲不振)等の証を主治する。また足三里には昇降の作用があるので,二穴を配穴すると補中しながら行らす(理気)作用が期待できる。

④中脘─足三里─三陰交

中は手太陽,少陽,足陽明,任脈の交会穴であり,また六腑の会,胃の募穴でもある。四経の交会であるので,四経の経気を通達することができる。胃の経気はここに集まり,胃中の温潤な陽気は水穀を腐熟する根源である。胃気が不足すると水穀不化となり,大過であれば消穀善飢となる。中脘にはまた補中益気,通里中焦,調和五臓の作用があり,腹中の一切の疾病を主治する要穴とされている。

胃は下降するを順としており,これに足三里を配穴して胃気を下行させ降濁導滞をはかれば,胃気の運行,水穀の運化を助けることができる。

さらに三陰交を配穴すると滋陰健脾の作用が生じる。

中,足三里,三陰交を配穴すると,健脾和胃,調理気機,鎮静安神,調補気血の作用が生じ,脾胃虚寒,気血両虚あるいは脾胃の一切の疾患および気血虚衰によっておこる心神不安,心悸失眠等を主治する。

虚胃熱の見られる者には,中脘を瀉してその熱をとる。脾胃不和で清濁をわけることができず,上吐下瀉する者には,中脘を補して清気を昇らせ,足三里を瀉して濁気を降ろし,三陰交を佐として用い陰陽の調和をはかって,中気がスムーズに働くように助ける。

 

参考文献

  • 臨床経穴学                        東洋学術出版社
  • 針灸経穴辞典                      東洋学術出版社
  • 中医鍼灸の地方と処方          東洋学術出版社
  • 中医鍼灸 臨床発揮             東洋学術出版社

 

ページトップへ