哮証:喘息発作」の2症例から標本理論を検討する(気管支喘息、気管支拡張症、肺気腫の鍼灸治療 (公社)愛媛県鍼灸師会症例検討会報告から|松山市の鍼灸院|半身不随、うつ病、がん、不妊症

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内科系

哮証:喘息発作」の2症例から標本理論を検討する(気管支喘息、気管支拡張症、肺気腫の鍼灸治療 (公社)愛媛県鍼灸師会症例検討会・症例発表

内科系 2020年01月23日

2020.1.12(公社)愛媛県鍼灸師会症例検討会資料

「哮証:喘息発作」の2症例から標本理論を検討する

越智東洋はり院 越智富夫

 

はじめに

今回、哮証に対して“本治と標治”の順序が的を得たことで比較的早期に著効を得ることができた2症例を紹介したい。

哮証は比較的よくみられる呼吸器系の慢性疾患で、現代医学の気管支喘息、気管支拡張症、肺気腫などは本証候が出現する疾患である。鍼灸治療では、肺、脾、腎の3臓との関係が深く、主として内外の邪が合し、痰気が互いに影響しあって気を塞ぎ、肺失粛降となって起こるとされている。発作期の病機は主として肺にあるので、治療は去邪宣肺(邪気を祓い肺気の流れをよくする)、豁痰利気(痰を除去し気の昇降を改善する)を主とするのがよく、また緩解期は補肺、健脾、益腎などの調補により本治をはかるべきであるとされている。

今回取り上げた“本治と標治”は中医学の臨床における「標本緩急」で示される最も基本的な治療原則に関する内容であるにもかかわらず、現在の鍼灸治療では、あまり重視されていないように思われる。そこで、哮証という発作性の症状を主とする慢性の経過をたどる疾患において、“本治と標治”をどのような順序で行うべきか、このことが治療効果を左右する最も重要なカギとなることを2症例を比較検討する中で明らかにしたい。

 

 

【症例1】肺脾気虚、痰濁内生による哮証

患 者:女、32歳、初診2017年11月28日

主 訴:気管支喘息を患って2年余りになる。

現病歴:2015年に感冒から気管支炎を患った。その後、風邪をひくと発作が起こるようになった。発病は夜間が多い。発病時には呼吸困難となり、喉に痰鳴がある。痰は多く、喘いで汗が出て、息がつながらなくなり、心悸が起こる。平素から食欲不振、泥状便となることが多く、便の回数も多い。肩背部の凝りがひどい。倦怠感・無力感、頭暈、目がかすむなどの症状を伴っている。身体は痩せており、顔色は蒼白。舌質は淡、舌苔は薄膩、脈は濡弱であった。現在、通院しており、調子が悪くなると吸引ステロイド薬を服用している。

弁 証:脾肺両虚、痰濁内生。痰が肺に内伏し、衛外不固となっている。邪を感受して痰を触発することで、哮喘を起こしやすい状態である。

取 穴:初診は、風門、肺兪、膏肓、脾兪、足三里、陰陵泉。4診以降は、気海を追加。週1回の治療とする。風門と肺兪には温灸を加える

効 果:初診で肩や背中の凝りがほぐれ、呼吸が楽になったという。4診後、哮喘と随伴症状は軽減した。8診後、哮喘および随伴症状は著しく軽減したので、吸引ステロイド薬の服用を停止し、様子を見たところ、軽い呼吸困難は起こるが、哮喘は起こっていない。13診後、哮喘の再発がなく、精神状態も良いようなので、月1回程度の治療とした。現在も月一回程度の間隔で疲労回復の目的で来院している。

考 察:来院中は発病していなかったため、哮証の病機にもとづいて論治した。その病機は、哮喘を繰り返していると脾に影響が及び、脾の運化が悪くなり、湿が集まり痰を形成する。痰が肺にたまり湿痰阻肺となっていると、肺部感染といった誘因で喘息発作が起こりやすい状態になると考えられる。したがって治療は本から行うこととした。益気健脾の法を用いて、湿痰の内生を制することとした。湿痰が生じなくなれば、肺気を阻滞させる邪がなくなり、肺気の昇降出入が正常になることで、哮喘は自然と再発しなくなると考えた。初診では風門、肺兪、膏肓により補気益肺をはかって固表を助け、抵抗力の増強をはかった。また脾兪、陰陵泉・足三里(補)により健脾益気制湿をはかった。4~13診では更に気海(補)を追加し、補肺と健脾の作用の増強をはかり、湿痰を制した。これにより湿痰の病を解決しただけでなく、随伴症状もそれにつれて治癒させることができた。

 

 

【症例2】脾肺両虚、痰濁内伏による哮証

患 者:男、21歳、初診2018年3月21日

主 訴:哮喘を患って18年になる。

現病歴:18年来、哮証の発作を反復的に起こしている。10日前に雨に打たれた後に再発した。発作時には呼吸困難となり、喘いで汗がでる。喉には痰鳴がある。白痰を喀出するが痰は粘稠で出にくい。胸満悶、食欲不振、悪心・嘔吐、冷たい飲食を欲す、頭暈、息切れ、心煩、急躁、身体のだるさ、無力感といった症状を伴っている。夜間に痰が多い。舌苔は白厚でやや膩、脈は滑数であった。現在、病院では気管支喘息、肺気腫と診断されている。吸入ステロイド薬を最近は毎日使用している。

弁 証:肺脾両虚、痰濁内生、衛外不固。外邪の誘因により哮証が再発。

治 則:発作時は宣肺平喘をはかり、緩解期は健脾益気、培土生金をはかる。

取 穴:初診~4診:風門、肺兪(瀉)。脾兪、中、中、天突(平補平瀉)。5~8診:肺兪に豊隆を配す。9~14診:肺兪、膏肓、脾兪、足三里、陰陵泉(補)に変更。

効 果:4診後、哮喘は止まり、咳嗽は軽減した。心煩は消失し飲食も増加した。舌苔は白潤となる。まだ夜間に痰が多い。8診後、痰の量は減少した。13診後、諸症状はなくなり、精神も良好で呼吸安定した。21診までは哮喘は起こっていない。

考 察:患者は哮証を長期間患っていることから、脾肺両虚となっている。脾が虚すと痰濁が内生するし、肺が虚すと衛外不固となり邪が侵襲しやすくなる。本症例の病機は、雨にあたって肺中の伏痰を触発し、寒邪が肺に侵襲して肺気の昇降出入が悪くなって発症したものである。発作時には呼吸困難、起坐呼吸、喘いで汗がでる、喉の痰鳴、白痰を喀出、胸苦しいといった症状が出現するが、これらは痰気阻肺の証候である。また食欲不振、身体のだるさ、無力感、息切れ、頭暈、多痰といった随伴症状は、脾虚による証候である。したがって治療はまず標を治すこととし、風門、肺兪(瀉)により宣肺平喘をはかり、中、中、天突(平補平瀉)で気機を調理し、降気平喘をはかった。4診後には哮証は緩解した。5~8診では夜間の痰が多いので肺兪に豊隆を配し、肺の化痰を増強した。9~14診では、緩解期は本治を主とする原則に従い、健脾益気、培土生金の法に改め、肺兪、膏肓、脾兪、足三里、陰陵泉(補)とした。本症例では、先に標を治し、後に本を治した。標と本に対処する手順が的を得ていたので、良い効果を収めることができたと考えられる。

 

  • 痰濁阻肺の病因病機
①久咳や久喘 肺が津を散布できなくなり、液が聚って痰になる 痰湿漬肺証:痰湿が上り肺を漬(ひ)たしている状態
②脾虚 運化ができず、湿が聚って痰になる

「脾は生痰の源,肺は貯痰の器」であり,肺気が痰に阻止されると,粛降が失調する。したがって咳嗽多痰で白色の濃い痰を喀出する,胸脇の膨満苦悶感,重篤では喘促〔呼吸が急促して呼吸困難になること〕が主症となる。

気管支喘息について

 

1.気管支喘息とは、

気管支喘息(以下喘息)は、「気道の慢性炎症を本態とし、臨床症状として変動性をもった気道狭窄による喘鳴、呼吸困難や咳で特徴付けられる疾患」と定義されていいる。

 

2.喘息の人の気道の状態

喘息の人の気道は、炎症細胞(好中球、好酸球、リンパ球など)、気道構成細胞(気道上皮細胞、繊維芽細胞、気道平滑筋細胞など)、および種々の液性因子により、症状がないときでも常に炎症(慢性炎症)を起こしています。その結果、健康な人に比べて気道が狭くなり(気道狭窄)、気道はとても敏感(気道過敏性亢進)になっています。そのため、炎症がおこっている気道は、ホコリ・タバコ・気圧の変化・ストレスなどのわずかな刺激でも敏感に反応し気道が狭くなり、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、息苦しさ、咳などの症状を呈します。下記の図を参照のこと。

 

3.喘息の治療

喘息の治療は、発作をおこさないための気道炎症をコントロールする治療が中心となります。喘息発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなり、治療が難しくなります。喘息は吸入薬や飲み薬、点滴とさまざまなタイプの薬が使われますが、発作が起きないようにコントロールする薬をコントローラー、発作が起きたときに緊急的に使用する薬をレリーバーと呼びます。それぞれ、重症度によって使用する薬は異なります。

 

喘息の気道の状態の図

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